学びと出会いに溢れた 台湾研修旅行 4泊5日の思い出

651名から選ばれた8名の学生は3/22~26の4泊5日の研修旅行に参加。
今回はツアープラン部門大賞作品のプランの一部を組み込み、第21回ならではの研修旅行となった。
観光旅行とは違った行き先や現地の同年代との出会いで大きな学びと成長に繋がった5日間をご紹介。

1・2日目 出発、そして台湾にふれる

 東京・大手町のサンケイビル前に早朝集合した8名の学生たちは、最初こそ緊張の面持ちだったが、羽田に向かうバスが出発するころには打ち解け始め、呼び名を決め合うなど、すぐに和やかな雰囲気に包まれた。男子3名、女子5名、中学1年~大学2年までと学年は異なるが、積極的に会話を楽しみながらエバー航空で台湾へと向かった。

 到着後、最初に訪れたのは中正紀念堂。バス移動中には、現地ガイドの馬さんから中正という言葉の意味や、蒋介石とその建国以降の台湾の歴史についての解説を受けた。参加者からは敷地内に日本の桜が植えられた経緯などの質問があがり、堂内では巨大な蒋介石の像などを見学し、台湾の歴史的背景を学んだ。
 2日目は気温25度近くの晴天で、まず林森公園を訪問。青々とした芝生が美しい公園は、かつてスラム街であった場所を整備したもので、日本の統治時代の鳥居が残されていることなどからも、複雑な歴史を物語っていた。
 続いて訪れた松山文創園区は、日本統治時代のレトロな雰囲気を残した建物群で、隣接する台北ドームや雑貨ショップを巡りながら、最先端の台湾文化に触れた。学生たちは自由行動の中で、アート作品の展示や台湾雑貨のショッピングなどを楽しんだ。
 台湾文学基地では、日本様式の官舎が残る文化財を見学。文学基地の職員とのやり取りの中で、学生たちは英語や中国語も交えて積極的に質問を重ね、国際感覚を養う一幕もあった。さらに、ツアープラン部門大賞の長南さんのプランにも登場する「電影珈琲館」に立ち寄り、映画「KANO~1931海の向こうの甲子園~」の世界観を体験。KANOの映画プロデューサーがオーナーのカフェには、映画にまつわる小道具やグッズが飾られ、店内も昭和的な日本を感じられ、日本と台湾が交差する文化スポットを五感で楽しんだ。
 その後、国立台湾博物館を訪れ、後藤新平や児玉源太郎の銅像をはじめ、台湾に生息する動物の剥製や先住民文化の展示を見学。自由時間には思い思いに館内を回り、ミュージアムショップで記念品を購入するなど、充実した時間を過ごした。

国立台湾博物館。ツアープラン部門大賞の
長南さんのプランを採用しました

 夕方には台北から車で1時間ほどの山間の観光地・九份を訪れ、展望台からの景色に歓声を上げながら全員で記念撮影。タピオカや名物の草餅などを楽しみながら、九份土産を物色し、自由散策を楽しんだ。帰りのバスではそれぞれの学校にいる留学生について語り合うなど、交流意識の高まりも感じられた。
 夕食時には審査委員を務めて頂いた作家の片倉佳史さんと、元産経新聞台北支局長でジャーナリストの矢板明夫さんをお招きした。片倉さんからは日本統治時代における「治安の安定」「教育の向上」「病気対策」「調査事業」の4つの柱や、善行の精神を継ぐ台湾人の親日姿勢についての講話も。学生達も積極的に質問を繰り返し、深い学びを得る一日となった。

審査委員を務めた片倉氏と矢板氏から台湾について教えて頂く夕食会

3日目 台湾の現在と未来を学ぶ一日

外交部で台湾について学ぶ研修生たち

 3日目は台湾の中枢を学ぶ1日。まずは総統府を訪れ、歴代総統の紹介やAI・半導体関連技術の展示など、台湾の歴史と未来の両面から学習。急ぎ足での見学となったが、学生達は展示の一つ一つを写真に収め、今後の学びに活かそうとする姿勢を見せた。
 続いて表敬訪問した外交部では、外交部日本総合事務課の李碧娟課長に対応頂き、学生からは台湾舞踊、大阪万博、国民性などについて多彩な質問が飛び交った。
 学生から「台湾は多様性を重んじているが、だからこそ統一的なアイデンティティの確立が難しいと感じるが、台湾人としてアイデンティティの確立についてどう考えるか」と鋭い質問もあり、それに対して李課長は、「台湾人としての統一的なアイデンティティの確立は必要としておらず、様々なルーツを持つ人たちが住み、留学生などの外国から台湾にやってくる人を寛大に受け入れる姿勢が備わっている、それこそが台湾人の良いところだ」と答え、学生達も納得の表情を見せた。

東呉大学での学校交流。
最後にはお互いのSNSを教え合う姿も

 教育部でも、台湾の教育制度や日本との留学交流についてレクチャーを受けた後、質疑応答が展開。学生たちは自ら中国語や英語を用いて自分の意見を伝える努力を惜しまず、職員からもその姿勢に高い評価が寄せられた。
 午後には東呉大学での学生交流が行われた。ランチを食べながら、同世代同士が語り合い、国や文化を超えて友情が芽生えるきっかけに。「日中・台中の認識のズレを埋めるには何ができるか?」という問いに対し、「インターネット情報のみに頼らず、直接現地で人と話すことの重要性」など、真摯な意見交換がなされた。

4・5日目 台南へ。 歴史を学ぶ観光と学生交流

赤崁楼にて擲筊(ポェ)で運試し

 4日目は、JR東海の新幹線技術が採用された台湾高速鉄道に乗車し、台南へ。
 台北駅から台南駅までは105分間の移動で、日本の技術力の高さと信頼を実感しながら、学生達は新幹線の仕様の違いなどにも関心を寄せた。移動中は学生8人でディスカッションを自発的に行い、651人の中から選ばれた学生らしい、意欲的な向上心の高さを垣間見せた。
 台南に到着後、赤崁楼を訪れ、オランダ人によって築城されたオランダと台湾文化が融合された建造物で、誕生400年を迎え母親が日本人というルーツをもつ鄭成功についての学びを深めた。赤崁楼内にある文昌閣では2枚の木の板を落として神様からの参拝の許可を得るための擲筊(ポェ)で運試し。受験や試験を控える学生たちの中には特製のペンをもらうことが出来た学生も。

 後半は、台湾南部の農業学校が前身である国立台南大学附属高級中学を訪問。農業・畜産・食品加工を学ぶ生徒たちとの交流が実現し、食品科の学生たちと一緒にパン作りを体験。言葉は通じずとも、翻訳アプリなどを駆使しながら漫画の話題などで心の通じ合う時間を過ごした。
 SNSアカウントを教え合うなど、現代の学生らしいコミュニケーションをとる様子もあり、今後の再会に期待を寄せた。
 最終日は台北に戻り、4泊5日の思い出を振り返りながら、台北駅で日本へのお土産を吟味した。今回の研修旅行は新設されたツアープラン部門大賞作品の一部を組み込み、学生の意見も反映された旅行だったが、台湾への学びと日台関係に関心のある切磋琢磨できる仲間との出会いでもあった。解散の東京駅では仲間との別れに名残惜しさを見せながらも、これからの日台友好の未来と仲間8人の再会に期待を寄せ、それぞれの帰路についた。

パン作りを通して一気に心の距離が縮まりました

台南までの移動中にディスカッションを
繰り広げる意欲的な研修生8人

日本統治時代の建物である林百貨店で歴史を学びながら
お土産選びも楽しみました