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セミナーレポート「企業の競争力を高める健康経営とウェルビーイング経営~最新トレンドと実践方法~」2024年11月19日(火)開催

変化の激しい現代社会において、企業の持続的成長と従業員の幸福追求を両立させる経営手法が注目を集めています。2024年11月19日に開催されたセミナー「企業の競争力を高める健康経営とウェルビーイング経営~最新トレンドと実践方法~」では、このテーマが深く掘り下げられました。

健康経営が企業の生存戦略に

特定非営利活動法人健康経営研究会 理事長の岡田邦夫氏は基調講演で、現代企業が直面する深刻な課題を列挙しました。高齢化に伴うプレゼンティーイズム(出勤しているが体調不良で生産性が低下している状態)やアブセンティーイズム(病気による欠勤)の増加、少子化による人材不足、メンタルヘルス不調の拡大、そして「Quiet Quitting(静かな退職)」と呼ばれる現象が企業の根幹を揺るがしています。精神障害による労災請求件数の急増や過重労働に起因する損害賠償リスクの顕在化も、企業価値の毀損に直結する要因として指摘されました。

岡田氏は「人という資源を資本化し、企業の成長を通じて社会に貢献する」健康経営の重要性を強調しました。特にGoogleの「Project Aristotle」でも実証された「心理的安全性」の確保を重視しています。これは「チーム内でどのような発言をしても非難されず、失敗を恐れることなく安心して仕事ができる状態」を指し、従業員エンゲージメントと労働生産性の向上に寄与するといいます。

健康投資の深化として、岡田氏は「人間投資(リスキリング、職務適性向上)」「空間投資(快適な職場環境)」「時間投資(柔軟な働き方、ワークライフバランス)」の3つの無形資産投資を提示しました。経営層の主体的関与により従業員の自律を促すことで、持続的成長が実現できると述べました。

ウェルビーイング経営が収益性を実証

慶應義塾大学 SDM研究科 教授/武蔵野大学 ウェルビーイング学部 学部長の前野隆司氏は特別講演で、「経営戦略としてのウェルビーイング経営」の有効性を科学的データで裏付けました。WHO定義による「身体的、精神的、社会的に良好な状態」であるウェルビーイングは、健康、幸福、福祉の三側面を統合した概念です。
前野氏が提示した米国の調査では、幸福度の高い従業員は創造性が3倍、生産性が31%向上し、欠勤率や離職率、業務上事故の大幅な減少につながることが判明しました。日本国内でも、幸せなチームの生産性は20~40%高いという結果が出ています。さらに注目すべきは、英オックスフォード大学と米ハーバード大学の共同研究です。企業のウェルビーイングが企業価値、ROA(総資産利益率)、利益と正の相関関係にあることが実証され、ウェルビーイング経営の投資対効果が明確に示されました。

日本企業の価値観転換が急務

欧米で「従業員を幸せにする経営」が主流となる中、日本に根深く残る「仕事は辛くても耐えるもの」という価値観の刷新が急務だと前野氏は指摘しました。「ハラスメント型」の指示命令が従業員のストレスを増大させる一方、成長支援と権限委譲、感謝の表現を重視するウェルビーイング経営こそが、真のパフォーマンス向上をもたらすといいます。前野氏は独自研究による「幸せの4つの因子」を企業実践の指針として提示しました。

・自己実現と成長(やってみよう) – 夢や目標の設定、企業理念への共感、主体的な業務への取り組み
・つながりと感謝(ありがとう) – 良好な人間関係構築、相互支援と感謝の文化醸成
・前向きと楽観(何とかなる) – リスクを恐れない挑戦姿勢、ポジティブな思考
・独立と自分らしさ(ありのままに) – 個性の活用、自分らしい働き方の実現

これらの因子を高めることで、従業員が生き生きと働き、企業の生産性・創造性、ひいては企業価値と利益が向上する「好循環」が生まれると結論付けました。

日本企業の「伸び代」に期待

先進国の中で幸福度が低い日本の現状について、前野氏は「大きな伸び代がある分野」と前向きに評価しました。ウェルビーイング経営への重点投資が企業と個人双方に大きな成長機会をもたらすと展望を示しました。

今回のセミナーを通じて明らかになったのは、従来の健康管理を超えて従業員の心身の幸福度を積極的に高めることが、現代企業の競争力強化における決定的要因となるという事実です。人的資本経営が重視される時代において、ウェルビーイング経営は持続的企業成長と働く人々の豊かな人生を両立させる必須戦略として、その重要性を増しています。

<特別協賛>株式会社アドバンテッジリスクマネジメント<協賛>株式会社SmartHR/株式会社iCARE

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