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セミナーレポート「価値創造経営 ~企業価値を高める財務・非財務戦略~」2024年9月25日(水)開催

産経新聞社は、オンラインセミナー「価値創造経営 ~企業価値を高める財務・非財務戦略~」を開催し、各界の専門家や企業の経営層が登壇しました。本セミナーでは、不確実な時代を勝ち抜くための人的資本経営のあり方、企業価値向上に資する人材戦略や組織変革の具体的なアプローチが多角的に議論されました。

AI時代を勝ち抜くための「コーポレートトランスフォーメーション」:IGPIグループ・冨山和彦会長

IGPIグループ会長の冨山和彦氏は、日本の企業が直面する構造的な課題と、それに伴う経営戦略の大転換を提言しました。冨山氏は、日本が「人手不足の恒常化」という前例のない時代に突入したと強調しました。少子高齢化による生産年齢人口の急減で、2040年頃には1000万人以上の人手不足が見込まれるとし、これは外国人材活用でも埋めきれない規模だと指摘しています。これまでの30年間続いたデフレ期の「コスト抑制・賃金抑制」の競争モデルは終焉を迎え、今後は「賃上げによる人材確保と、付加価値向上を通じた収益拡大」が新たな競争モデルとなると警鐘を鳴らしました。

AI技術の進化はホワイトカラーの仕事を二極化させ、定型業務はAIに代替され、人間には「センス」や「良い仕事」を追求する非定型業務が求められると述べました。これには、終身雇用・年功序列型のメンバーシップ型雇用から、職務を明確にするジョブ型雇用への転換が不可欠だとしています。

冨山氏はまた、破壊的イノベーションがゲームのルールそのものを変える「スマイルカーブ現象」に言及し、企業の価値創造の源泉が有形資産から無形資産(ソフトウェア、コンテンツなど)へと移行している現状を説明しました。この変化に適応するためには、既存事業の深化(進化)と新たなイノベーションの探索(探索)を同時に推進する「両利き経営」が重要だと説きました。これは長期間を要する「大航海」であり、経営トップの強いコミットメントと、それに合わせたガバナンスや人材戦略の抜本的改革が求められると締めくくりました。

日本の企業は「価値労働生産性」の向上が喫緊の課題であり、これは先進国で低い位置にあるものの、大きな伸びしろを秘めていると指摘しました。人的資本経営は、知的創造力による価値創出と、人材が希少資源となる労働供給制約の時代において、競争力を決定づける要素であり、社会モデルとビジネスモデルの変革が求められると強調しました。この変革は、「ちょろっと何かエンゲージメントスコアを上げる」といったレベルではなく、企業の根幹的なあり方を変える「コーポレートトランスフォーメーション」であり、5年や10年で実現するものではない「長い大航海」であるため、早期に着手し継続することが重要だと述べました。

経営管理に新風「FP&A」が変革を牽引 池側氏が導入事例を解説

ストラットコンサルティング株式会社 代表取締役でFP&Aアドバイザーの池側千絵氏は、日本企業の経営管理組織の現状と、新たな変革を牽引するFinancial Planning & Analysis(FP&A)の役割について詳しく解説しました。

池側氏は、欧米の企業がCFOの管轄下で財務・会計に加え、経営企画や事業管理までを一元的に担うのに対し、日本企業ではこれらが社長や事業本部長直下の別組織として分散している傾向があると指摘しました。この「日本的慣習」が、全体最適の妨げになっている可能性を示唆しています。

FP&Aは、このような組織構造に新風を吹き込む存在として提唱されました。FP&Aのプロフェッショナルは、事業部門に深く入り込み、財務・会計の専門知識を活かして事業目標達成の支援、予算管理、そして日常の意思決定の質向上に貢献すると説明しました。単なる報告業務に留まらず、事業リーダーと共に「腹落ちし、行動につながる物語」を紡ぎ出す「ビジネスパートナー」としての役割を強調しました。

日本CFO協会が主催するFP&A研究会には、富士通、キリングループ、資生堂など、多くの企業が参加し、具体的な導入事例が増えていることを紹介しました。FP&Aの導入は、企業価値向上に資する投資意思決定の精度を高めるだけでなく、個々の社員にとっても専門性を持ったキャリアパスを提供するとそのメリットを語っています。池川氏は、FP&Aの導入はトップダウンでの強いコミットメントと、継続的な組織能力の変革が不可欠だと述べ、日本企業の文化に合わせた独自の導入方法を模索する重要性を訴えました。

FP&Aの導入にあたっては、経営者とCFOが目的を明確にし、トップがリードすること、そして「事業に貢献したいというマインドセット」を持つことが重要だと強調しました。また、テクノロジーを活用して業務効率化を図りながら、FP&Aの役割を明確にし、実践を通じて成果を積み上げることが成功への鍵だと説明しました。

味の素、財務・非財務戦略で企業価値創造を加速 赤字から最高益への軌跡

味の素株式会社 執行役常務 財務IR担当の水谷一氏は、同社が過去の危機を乗り越え、いかにして企業価値を最大化してきたか、その財務・非財務戦略を具体的に解説しました。

水谷氏は、味の素グループの「ASV(Ajinomoto Group Shared Value)」という経営理念を強調しました。これは事業活動を通じて社会課題を解決し、同時に経済価値を創造するアプローチであり、創業者の「うま味」発見の精神に根差していると説明しました。特に、牛のげっぷ由来の温室効果ガス排出を削減する製品「アジプロ-L」を世界に広める取り組みは、ASVの象徴であると述べ、フランスのダノンとのグローバル提携事例を挙げました。

財務部門のビジネス貢献事例として、「PGA(Price Gap Analysis)」を紹介しました。これはSKU(最小販売単位)レベルで販売状況とコストを詳細に把握し、競合と比較して最適なマージンを設定する手法です。企業価値向上に向け、自社株価と分析価値のギャップ分析、優良競合との比較、資本戦略を定期的に実施していると説明しました。国内グループ従業員への単元株支給により、持株会加入率が30%から約70%に向上し、社員の株価意識向上と全社的な価値貢献に繋がったと語りました。

非財務戦略ではESG(環境・社会・ガバナンス)貢献を重視し、ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデックス(DJSI)評価向上を目指し税務ポリシーや国別納税データ開示を推進していると述べました。これは画期的な取り組みで、透明性向上と企業価値創造に貢献すると強調しています。サステナビリティ・リンク・ファイナンスも活用し、社会貢献と資本コスト低減を両立させています。水谷氏は、これらの財務・非財務両面からのアプローチを通じて、顧客、取引先、地域社会、従業員、株主といったあらゆるステークホルダーとの関係を強化し、持続的な企業価値向上を目指すと締めくくりました。

<協賛企業>株式会社ラクス/株式会社コンカー/株式会社ログラス/株式会社LayerX/株式会社データX/Sansan株式会社

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