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セミナーレポート「製造業DX大解剖~現場から始める生産性向上と付加価値創出~」2024年9月11日(水)開催

日本の製造業DXが直面する課題と解決策 — 株式会社カクシンの天野眞也氏が語る

株式会社カクシンのCROである天野眞也氏が、「製造業DX~DX推進による組織の生産性向上~」と題した講演を行い、製造業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の現状と課題について詳細に語った。天野氏は、DXがいかにして日本の製造業の生産性向上に貢献できるか、そしてどのように課題を乗り越えるべきかを解説した。

日本の製造業は、高度成長期から現在まで日本経済を支えてきたが、近年はグローバル競争の激化と技術革新の遅れにより厳しい状況に立たされている。特に、製造業における第4次産業革命への対応が他国に比べて30%以上遅れており、IT人材不足やレガシーシステムの技術負債が大きな足かせとなっていると天野氏は指摘する​。また、労働生産性が欧米諸国に比べて20ドル以上低い現状も、日本の製造業が直面する大きな課題の一つである​。

天野氏は、特に地方の製造現場が抱える問題に焦点を当てた。少子高齢化による人材不足、旧型設備の使用、新型コロナウイルスや国際情勢による半導体不足や原価高騰といった要因が、地方の製造業者に深刻な打撃を与えている。また、熟練した従業員の引退に伴う「ノウハウ」の喪失が生産性に大きな影響を及ぼしていることも強調された​。

天野氏は、これらの課題に対処するためには、DXの推進が不可欠であると述べた。特に、「デジタルツイン」の導入は、製造現場の効率化とリスク管理に大きく貢献すると説明した。デジタルツインとは、デジタル空間上で製造プロセスをシミュレーションし、最適な動線や設備間のクリアランスを検討できる技術で、これによりコスト削減や生産性向上が期待されている​。さらに、デジタルツインを活用することで、変種変量生産や物流管理の効率化を図り、企業全体の最適化が可能になるとした​。

講演の最後に天野氏は、DXは単なる自動化や省力化に留まらず、企業全体の付加価値を高め、サプライチェーン全体に利益をもたらすものであると強調した。製造業のDXが進展すれば、単にコスト競争で勝つだけでなく、世界市場で「選ばれる」企業へと成長できると述べ、日本が再び製造業で世界No.1を目指せると力強く締めくくった​。

生成AIとIoTを駆使した製造業DXの最前線—旭鉄工の挑戦

旭鉄工の代表取締役社長である木村哲也氏は、「製造業DXで実現する付加価値ファースト戦略」と題した講演で、DX(デジタルトランスフォーメーション)とカーボンニュートラル(CN)に取り組む同社の具体的な事例と成果を紹介した。講演では、特に生成AIやIoT(モノのインターネット)を活用したカイゼン(改善)手法に焦点が当てられた。

旭鉄工は、ティア1(1次下請け)企業として自動車部品の製造を手掛けており、従来の生産工程に対するDXの導入により、年間10億円ものコスト削減を達成した。特に、IoTによるリアルタイムの稼働モニタリングシステムが稼働するライン数は200を超え、従業員の労務費削減や生産性向上を実現している​。

同社のDX戦略は、単なる「見える化」にとどまらない。木村氏は、「データで行動を変える」ことがDXの本質であると強調し、IoTと生成AIを活用してカイゼンのPDCA(計画・実行・確認・改善)サイクルを高速化する取り組みを紹介した。例えば、従来はストップウォッチで手動測定されていたサイクルタイム(CT)が、センサーによって自動的に正確に測定されるようになり、これにより短時間の停止も記録され、細かい生産効率の向上が可能となった​。

具体的な成果の一例として、生成AIを活用したナレッジマネジメントが挙げられる。これにより、カイゼンのアイデアが自動で提案され、問題解決のスピードが大幅に向上している。特にAIが問題点を自動で発見し、過去の改善事例に基づいて解決策を提示するシステムが導入され、従業員の負担を軽減しながら、効率的なカイゼンが進行している​。

また、旭鉄工はカーボンニュートラルの達成にも取り組んでおり、IoTを駆使して電力消費量をリアルタイムでモニタリングし、無駄な電力消費の削減を行っている。結果として、2013年と比較して電力消費量を42%削減、CO2排出量も大幅に減少させた​。

木村氏は、これからの製造業が競争力を保つためには、単なるコスト削減にとどまらず、付加価値の向上が重要であると述べ、生成AIやIoTを活用したDXがその鍵であると強調した。旭鉄工の成功事例は、デジタル技術を取り入れることで製造業全体が抱える課題を解決し、将来的には「選ばれるサプライチェーン」へと成長する可能性を示している​。

製造業のDXとデジタルツインの未来 — INDUSTRIAL-X 八子知礼氏が語る新たな付加価値創出

株式会社INDUSTRIAL-Xの代表取締役CEOである八子知礼氏は「デジタルで創るものづくりの新たな付加価値」と題した講演を行った。八子氏は、製造業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性と、デジタルツイン技術を用いた未来の製造業のビジョンについて語った。

講演の冒頭で八子氏は、過去の産業革命を振り返り、現在は「自動化と情報化の次のステージ」に向かっていると述べた。特に、2040年までに日本の労働人口が1200万人減少するという予測に触れ、この課題に対応するためにも製造業のデジタル化が急務であると強調した​。

DXの取り組みにおいて、八子氏が強調したのは「デジタルツイン」の活用だ。デジタルツインとは、現実世界の製造プロセスをデジタル空間に再現し、シミュレーションを通じて現実の業務にフィードバックを行う技術である。これにより、製造現場のオペレーションが予測可能となり、効率化と最適化を実現できる​。

具体的な事例として、山本金属製作所の「Learning Factory」が紹介された。この工場ではデジタルツインを活用して製造プロセスをシミュレーションし、リアルタイムでの業務改善が行われている。この技術により、製造業における「5K」(勘・コツ・経験・気合・根性)に頼る従来の手法から、データ主導の管理に移行することが可能になった​。

さらに、ESG(環境・社会・ガバナンス)経営とDXの関連性についても言及された。ESG経営の実現には、工場のエネルギー消費やCO2排出量のデータを可視化し、持続可能なビジネスモデルへの転換が不可欠であると説明。再生可能エネルギーの導入や、稼働状態の見える化によって、製造業が環境に与える影響を最小限に抑えつつ、生産性を向上させる道筋が示された​。

講演の締めくくりで八子氏は、デジタル技術を導入するだけでは不十分であり、それをいかに活用して新たな付加価値を生み出すかが鍵であると述べた。特に、日本の製造業が国際競争力を維持するためには、デジタルツインやAIといった先端技術を駆使し、従来のビジネスモデルを再構築する必要があると強調した​。

<協賛企業>株式会社マネーフォワード/株式会社アンドパッド/アステリア株式会社/株式会社セールスフォース・ジャパン/株式会社電通総研

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